マンションなどの耐震強度に関する構造計算書の偽造を見過ごした民間検査機関イーホームズ(東京都新宿区)に、国土交通省がほぼ毎年、定期的に立ち入り検査をしながら、同社の審査態勢の不備を指摘してこなかったことが明らかになった。帳簿の保管状況や検査員数の点検が中心で、建築確認の審査方法の中身は詳しく調べていなかった。こうした事態を受け、国交省は、民間検査機関への検査のあり方を見直す。
また、現行の建築確認制度では、書類審査ですべての偽造を見抜くのは困難として、欠陥建築物の被害者に対する補償の強化にも乗り出す。
国交省によると、民間検査機関への立ち入り検査は建築基準法に基づき、年1回程度で、「建築基準適合判定資格者」の資格を持った1級建築士の数や確認書類の保存状況、利害関係のある業者への検査の有無など、事務上の不備に関する点検が中心。構造計算書を個別に再計算することはなかった。
イーホームズに対しては、ほぼ毎年度末に実施。10月24日には抜き打ちの検査もしたが、書類の保管の不備について改善を指導しただけで、構造計算書の審査状況は調べなかった。今回の偽造問題発覚後に立ち入り検査をするまで、審査手続きの違反には気づかなかったという。
昨年は立ち入り検査をせず、建築基準法で定められた定期報告で事務概要や財務状況の書類を提出させていた。
国交省は偽造見過ごしの再発防止策として、立ち入り検査の強化を検討。構造計算書など重要書類の一部を抽出して詳しく点検するなどの案が浮上している。
ただ民間検査機関は122あり、建築確認の総数は年間約75万件。国交省は審査ミスを完全になくすのは困難とみており、建築確認の審査をすり抜けた欠陥建築物の被害者に対する補償の実効性確保が今後の検討課題だとしている。建物に欠陥があった場合に補償金が支払われる保険の売り主への加入義務などを軸に検討する。国交省幹部は「これまでの建築確認制度は性善説で運用してきた。今後は性悪説で制度全体を考える必要がある」と話している。
前にもこのBlogで取り上げましたが、性善説/性悪説の話題がでてきました。いい加減にして欲しい、これが率直な感想です。情報セキュリティの分野に性善説/性悪説のような哲学論争を持ち込むな、が私の主張です。これは、情報セキュリティだけでなく、今回問題なっている建築確認の制度のなかでも同じであろうと思います。性悪説によって、人を信じるなということでなく、制度の中で発生しうるリスクに備えるということに関しては、考え方は同じでしょう。国交省幹部の言いようは、性善説に考えてきたから何もしてこなかったいう言い訳にしか思えません。
ある制度は設計、構築し運用していくに当たり、性善説/性悪説のような決着の付かない論争を持ち込むのでなく、制度に潜むリスクをいかにコントロールしていくかを重視すべきではないでしょうか。
性善説/性悪説という哲学的思考を否定するつもりは全くありませんし、自分でも考えることがあります。しかし、もう一つのシステム、制度の中に持ち込むことは止めにして欲しいものです。