現在のGYAOの無料動画の中でのお勧めは、何と言ってもSF映画、いや映画史上の名作、日本の文部科学省が特選にしている唯一のSF映画、スタンリー・クーブリック監督の名作「2001年宇宙の旅」です。
しかし、この作品、その難解さもあり評価の分かれる映画でもあります。私も過去に映画のリバイバル上映、テレビでの放送、レンタルビデオと三回見ましたが、よく分かりませんでした。今回、GYAOで改めて見たのですが、その前にアーサー・C・クラークの小説を読みました。小説と映画、クーブリックとクラークの二人の奇才がアイデアを出し合い、映画製作と小説の執筆がほぼ同時並行で進んでいたことは、周知のことです。
小説を読んで、改めて映画を見ると、ああ成る程と思えることが多々あり、長年の疑問が氷解して、映画の良さを再認識しました。小説も素晴らしいのですが、やはり映画の映像表現がその後SF映画限らず映画一般に与えた影響を考えずにはいられません。私としては、映画に登場する公開当時としては近未来予測であったテクノロジーに着目をせざるを得ません。
1 登場する宇宙船のコックピット
この映画公開された当時(1968年)、最新鋭の旅客機でもコックピットの計器はアナログであり、ディスプレイを使ったものはレーダぐらいで、それも点の表示に過ぎません。それが、この映画に登場する宇宙船のコックピット、アナログ機器がなくディスプレイなのです。これは、最新のボーイング777やエアバスA380で採用されたグラスコックピットにそのものです。
�� 通信手段
登場人物のヘイウッド・フロイド博士が、地球軌道上の宇宙ステーションから地球上の自宅にいる娘に連絡をするシーンがります。通信装置の前に座った博士が、一枚のカード取り出し、装置に挿入しディスプレイに映し出された幼い娘と会話をするのですが、当時はカードの認証などいう技術も当然存在せず、もちろん映像を媒介とした遠隔コミュニケーションなど考えもしない時代です。凄いです。
�� 通信手段2
木製探査船、ディスカバリー号の乗員、デビッド・ボーマン船長とフランク・プール飛行士が船内でディスプレイに映し出されたBBCニュースの記事を読むシーンがります。これは、今回GYAOの動画をみて気が付いたのですが、まるでインターネットでBBCニュースから配信された記事を見ているようです。
元々、科学的考証の正確さには定評があったのですが、考証に拘り過ぎるとSF映画としての飛躍が無くなってしまいます。しかし、飛躍し過ぎても茶番に終わりかねず、加減が難しいと思うのですが、映画に登場した近未来技術の一部が実現しています。科学的考証をしっかりとし、その上でSF映画としての飛躍を表現した成果なのでしょうね。映画に登場し、そして実現した近未来テクノロジー、改めてこの映画の先進性に感嘆しました。
映画の初公開が1968年4月、何と40年前なのですね。アポロ11号の月面着陸が1969年7月、先立つこと1年3ヶ月です。公開から40年、流石に細部には古さを感じさせることはありますが、二人の奇才の近未来予想、驚嘆すべきものであり、映像表現もCG無しでよく出来たなと思います。
スタンリー・クーブリックは1999年、アーサー・C・クラーク2008年に他界しました。二人の奇才に、私は現在のインターネット社会の到来をどう思うか、映画製作当時に予想した近未来テクノロジーと現在技術の比較など尋ねてみたいと思わずにはいられません。勿論、そうしたテクノロジーに内在するリスクという負の面も含めてですが。
技術の進歩は、利便性を向上させるだけでなく、新たなリスク要因の発生というマイナス面も伴います。映画「2001年宇宙の旅」では、ヒトザルがモノリスの導きで道具を使うことを覚え、段々にテクノロジーを発達させた事が示唆(小説では明確に説明される)されています。ただ、テクノロジーの発達の伴う負の面、新たなリスク要因の発生も不可分なのだと思いつつ(職業病でしょうか)、4回目の鑑賞を終えたのでした。
(アーサー・C・クラークが執筆した続編、「2010年宇宙の旅」、「2061年宇宙の旅」、「3001年宇宙の旅」も買っちゃいました。通勤時間を利用して読んでいます)
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