2006年12月13日水曜日

winny 開発者に有罪判決

このところ、興味深い判決が続き、お蔭様でこのBlogを更新するモチベーションが上がっています。
今日は、あのWinnyの開発者が問われた著作権法違反事犯の判決がでました。大方の予想通りの判決と反応でした。

以下は、2006年12月13日の産経新聞Webからの引用です。

ウィニー開発、元東大助手に罰金150万
 ファイル交換ソフト「ウィニー」を開発し、ゲームや映画ソフトの違法コピーを容易にしたとして、著作権法違反幇助(ほうじょ)の罪に問われた元東大助手、K被告(36)に、京都地裁(氷室真裁判長)は13日、罰金150万円(求刑懲役1年)の判決を言い渡した。
 最大の焦点はソフト開発の意図で、検察側は「著作権侵害を企図した確信犯」と指摘。金子被告側は「新技術の検証にすぎない」として無罪を主張していた。
 ファイル交換ソフト利用者の違法行為で、開発者の刑事責任を認めたのは初めて。ソフト開発の現場に大きな影響を与えそうだ。
 起訴状などによると、K被告は平成14年5月、ウィニーをホームページ上で公開。群馬県高崎市の男性店員ら2人=有罪判決が確定=が15年9月、映画などを違法にダウンロードできる状態にするのを助けた。
 検察側は、インターネット掲示板への書き込みなどからK被告が著作権侵害への利用を意図して開発したと認定。「現在の著作権保護システムを根本的に破壊するため開発、公開して不特定多数の者にダウンロードさせ、違法コピーの横行を助長した」と批判した。
 一方、弁護側は、被告がホームページなどで違法な利用をしないよう呼び掛けたことなどを挙げ「違法行為を助長する意図も、悪用した者と意を通じたこともない。開発者が共犯として処罰されれば、技術者を萎縮(いしゅく)させる」と反論している。
(2006/12/13 10:26)
有罪の「天才」にネットで広がる批判と支持
「時代動いているのに」
 「こうしている間にも時代は動いている…」。ファイル交換ソフト「ウィニー」を開発したとして、著作権法違反幇助の罪に問われた元東京大大学院助手、K被告(36)被告は13日、京都地裁の判決公判後に記者会見し、自らの立場を強調した。防衛機密や捜査情報の流出が絶えず、社会問題化したウィニー。ネット社会に“革命”をもたらした天才プログラマーに、司法は有罪判決を下した。
 K被告はこの日、黒いスーツにネクタイ姿で約10人の弁護団を従えて法廷に立った。判決が宣告された直後、傍聴席からは報道陣や支援者が次々と退席。弁護側の主張を退ける理由が読み上げられると、金子被告は首を傾けて納得のいかない様子を見せた。
 閉廷後、開かれた記者会見では用意した文面を淡々と読み上げ、「ウィニーは、将来的に有用な技術であって、将来、その技術は評価していただけると信じている」と強調。その上で、「有用な技術開発を止めてしまう結果になることが何よりも残念。こうしている間にも時代は動いているにもかかわらず。控訴して、技術開発のあり方を世に問うて行きたいと思います」と訴えた。
 さらに、「違法行為をしてはいけないと注意してきた。ではどうすればよかったのか聞かせてほしい」と語気を強め、「(著作権侵害が横行する)結果が悪いから、悪いというのは納得できない」。
 同席した弁護士も「判決では著作権侵害を蔓延(まんえん)させる積極的な意図を明確に否定したが、有罪は解せない」とした上で、「玉虫色の判決だ。控訴して無罪を勝ち取る」と言い切った。
掲示板に批判と支持
 インターネットの世界で爆発的に広がったウィニーに対するユーザーの関心は高く、掲示板サイト「2ちゃんねる」には、判決日が近づくにつれて関連した書き込みが続出。「包丁をつくった職人も捕まるのか」「殺人をすると言っている奴に包丁を渡すのは問題」「核ミサイルはつくること自体が禁止」などと、K被告への支持と批判が乱れ飛んだ。
 判決の出たこの日は、同地裁の駐車場で、62枚の傍聴券を求めて208人が列に並んだ。大阪府富田林市から傍聴に訪れた会社員、片本亜希さん(25)は「ソフトそのものは非常に便利で、違法な使い方をする人がいるから問題になる」。京都府八幡市の男性会社員(35)は「仕事で著作権を扱っているので、注目していた。ウィニーによる被害は大きいと思っていた」と話した。
 有罪判決が宣告されると、支援者が同地裁内で「不当判決」と書かれた紙を掲げた。支援者の新井俊一さん(28)は「(この判決によって)ソフト開発者を萎縮(いしゅく)させるだろう。映像や音楽の分野で日本は後れをとることになり、残念だ」。
 傍聴に訪れた京都市南区の無職女性(29)は「有罪判決はソフト開発の環境にとっては良くないが、これだけ情報流出の被害が出ているので無罪もおかしい気がする」と困惑の表情だった。
 判決が告げられた10分後には、「2ちゃんねる」上に「有罪」と書き込まれた。約1時間後に書き込みは1000件を突破した。                

知識の意義 説明する責任
 インターネット総合研究所の藤原洋所長の話 「科学者、技術者には結果責任がある。経済的損失を補うことではなく、知識人として、知識の意義を説明する責任だ。ウィニーについて、分散したデータが自由に交換され、相互接続したネットワークが1つのコンピューターとして機能する点は国際的にも意義のある成果と評価する。だが、著作物が自由に交換され、著作権が守られないという社会的悪影響があった。金子被告はこれをしっかりと説明、注意喚起すべきだった。公害のように技術革新には、ひずみが生じるものだ。判決を機に、新しい研究開発を促進するなかで、知識人としての倫理が呼び起こされることを望む」

K被告語録
 ウィニーの開発者、K被告の発言を振り返った。
 「暇なんで(使いやすい)ファイル共有ソフトつーのを作ってみるわ。少し待ちなー」(平成14年4月1日、インターネット掲示板で開発宣言)
 「悪貨は良貨を駆逐するっていうのはいつの時代でもそうで悪用できるソフトは宣伝しないでも簡単に広まるね」(8月23日、姉へのメール)
 「著作物を勝手に流通させるのは違法ですので、そこを踏み外さない範囲でテスト参加をお願いします」(10月3日、掲示板の書き込み)
 「ソフト開発が犯罪の幇助(ほうじよ)に当たるという間違った前例がつくられてしまえば、日本のソフト開発者の大きな足かせになる」(16年9月1日の初公判)
 「雑誌で悪用を勧めるような記事があり予想外だった」(18年5月1日の公判での被告人質問)
 「新しい技術を生み、表に出していくことこそがわたしの技術者としての自己表現」(9月4日の最終意見陳述)「ウィニーは将来的には評価される技術だと信じている。今は新しいアイデアを思いついても形にすることすらできない。それが残念」(同)
(2006/12/13 17:03)


引用が長くなりましたが、判決と反応双方に興味があったので、敢えて長文の引用をしました。ご容赦下さい。
私は、記事にもあるように、Winnyによってデータ共有され、自由に交換できることは意義あることと、最初は思っていました。しかし、著作権の侵害を引き起こしたことは想像外で、おそらく開発者も最初から意図したことではないような気がします。しかし、報道された開発者のその後の言動が著作権を軽んじているような気配があり、また講演の中で侵害行為を公開するということでは、逮捕も致し方ないと思っています。
この事件で、Winnyによる情報漏えいの被害も深刻ですが、著作権に対して、それを軽視、もしくは無視するような言論が見られたこと、これも又深刻であるという気がしています。おりしも著作権保護期間の延長問題で、賛否両論が起こっています。この機会に著作権について議論深めることも有益と思います。
私の友人にカメラマンがいます。報道カメラマン志望と言うことなのですが、本人曰く「食うために」ということで、雑誌のグラビア撮影などをこなしています。彼は、写真の著作権は必ず押さえておくということです。そうでないと、自分の撮影した写真が流用され、自分のみならず他のカメラマンも仕事が少なくなってしまうからだそうです。昔は、著作権の意識が低く、高名な写真家でないと主張できなかったようです。そして、無名のカメラマンは自分の作品が流用されても著作権料も貰えず、という時期もあったようです。創造的な仕事をしていくためには、その成果に一定の保護を掛けるのは当然だと思います。
今回の事件では、開発行為そのものを罰した訳ではありません(と私は理解しています)。結果としての著作権の侵害が争点であり、開発という行為が萎縮することはないだろうし、萎縮などしてはいけません。ただ、保護すべき権利を蔑ろにしてはいけないということだろうと思ってます。皆さんは、如何様にお考えでしょうか。
丸山さんのblogにトラックバックしておきます。まあ、私も特殊は事犯だと思います。
では

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