2006年12月1日金曜日

住民基本台帳ネット

最近、とんと影の薄かった感のある住民基本台帳ネットですが、住民票コードの削除と損害賠償を求めた裁判の控訴審判決がでました。
で、その判決ですが・・・

以下は、2006年12月1日の産経新聞Webからの引用です。

住基ネット一律適用は違憲 大阪高裁、プライバシー侵害認める
 住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)運用でプライバシーを侵害されたとして、大阪府内の5市の住民16人が各市に損害賠償などを求めた訴訟の控訴審判決が30日、大阪高裁であった。竹中省吾裁判長は制度上の欠陥や危険性に言及し、「拒絶している市民への適用はプライバシー権を保障した憲法13条に違反する」と高裁レベルでは初の違憲判断を示した。その上で、箕面市など3市に住民4人の住民票コードを削除するよう命じた。賠償請求は認めなかった。
 住基ネット訴訟は13都道府県で各地方自治体を相手に起こされ、12地裁で判決が出ている。このうち石川県の住民が起こした訴訟で金沢地裁が昨年5月に違憲判断を示したが、高裁レベルでも同様の判決が出たことで住基ネットの運用や同種訴訟にも影響を与えそうだ。
 判決は、住基ネット運用の問題点として「目的外利用を中立的な立場から監視する第三者機関がない。制度に無視できない欠陥があり、プライバシー情報が本人の予期しない範囲で利用される危険が相当ある」u>と指摘した。
 原告は豊中、箕面、吹田、守口、八尾の5市の住民。勝訴した4人だけが削除を求めていた。
 平成16年2月の一審・大阪地裁判決は、全国民に割り振られた11けたの住民票コードについて「いつでも変更でき、一生使用し続けなければならないものではない」と指摘。「人格権やプライバシーに関する法的利益が侵害されたとは認められない」として請求を棄却した。


判決文を読んでいないので、正確な論評ではなく、単なる感想であることをご承知下さい。判決文では、’制度に無視できな欠陥がある’指摘しています。その上で、プライバシー情報が本人に予期しない範囲で利用される危険がるとしています。確かに、無視できない欠陥があれば、後段の不正な利用に結びつく危険があるというのは、論旨としてはすっきりしています。では、この’無視できない欠陥’とは一体何さしているのでしょうか。システム的な欠陥なのか、運用上の欠陥なのか、人間系の欠陥なのか。いずれにしても、そのような欠陥があるのであれば、住基ネットそのものの停止が必要なのではないでしょうか。おそらく、原告側が自らの住民票コードの削除と損害賠償しか求めなかったのでしょうね。
住基ネットに参加する自治体によって、ITや情報セキュリティに対する取組みや能力に差があることは事実でしょうし、そこにリスクが存在することも確かでしょう。しかし、そういったリスクが洗い出され評価されたことはありません。今回の控訴審判決で違憲判断になったことで、被告側は断然上告するでしょう。違憲判断を問うことであれば、上告理由になりますし、なんと言っても違憲判断を受け入れてしまえば、住基ネットのみならず、他の行政訴訟にも影響必至でしょうから。
そこで、最高裁に期待するのですが、是非ともこの訴訟を大法廷に送り、そこの審理で住基ネットに対するリスク評価をして頂きたいのです。その上で、そのリスクが住民にもたらす影響を判断するというのは、どうでしょうか。
住基ネット訴訟、提訴されたのは本件だけではありません。個々の訴訟の判決に右往左往するのでなく、住基ネットのリスク評価を行い、国民がその結果をもって判断できるようになればいいと思っています。
住基ネット、もう少し、皆で関心を持って見て往きたいですね。

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