作家の吉村昭氏がお亡くなりになりました。最後は、自ら点滴のチューブを引き抜き、尊厳死を選択されたと報道されています(医学関係者によると、それだけで直ちに死に至ることは考えられない。偶然ではとのことですが)。
私は、吉村氏の熱烈な読者という訳ではありませんは、氏の著作の何冊は読んでいます。緻密な取材に裏付けられた事実に基づく小説で、引き込まれるものがります。氏の死の報道のあとに「戦艦武蔵」を読んでみました。
「戦艦武蔵」は、吉村氏が初めて大きな文学賞を受賞し、作家としての大成のきっかけとなった作品です。読んでみて、情報セキュリティ上参考になることがありました。
�� 情報管理
現在では明らかな事実ですが、戦艦武蔵の建造は、その僚艦の大和ともに厳重に情報管理がなされ、極秘のうちに建造は進められました。両艦を攻撃し、撃沈させた米軍もその詳細については、戦後GHQによる海軍関係者への尋問や調査まで判らなかったとのことです。これは、その情報管理が徹底し、目的を達成したことの証しでしょう。
私の亡父は、昭和2年生まれ、終戦時は航空関係の工業専門学校の学生でしたが、たしか戦艦大和、武蔵については戦後に知ったと言っていた記憶があります。国外のみならず、国内に対しても徹底した情報秘匿が行われていたようです。
�� 建艦管理
戦艦武蔵は三菱重工長崎造船所で建造されました。建艦にあたっての管理は徹底され、武蔵の全体像/詳細を知っているのは、造船所の幹部と海軍からの監督官など数人で、後は設計に任る技師から作業員に至るまで、自分の担当/持ち場に関わる情報しか知らされていなかったとのことです。極端な話、武蔵の全長が何メートルかさせ、知っているの造船所幹部など数人しかいなかったそうです。
�� 設計図
設計図は、全部で31,308枚に及び、その全てが厳重に管理されていました。設計図は、その重要性により軍機、軍極秘、極秘、秘と分類され、軍機の設計図は、金庫で厳重管理、それ以下のは保管用の専用の部屋を設け、専任の担当者を任命、部屋への出入りや閲覧を徹底して管理を行ったようです。
ふーん、成る程なと思ったことの一部ですが、情報の秘匿ということでは、成功であったいうことですね。現在では、あれほどの巨大な建造物を米国の偵察衛星の監視を逃れて建造することは不可能に近いのでしょうが、設計図の管理など、参考になる事例ではないでしょうか。
追記
吉村氏の「海の史劇」、「ポーツマスの旗」などはお奨めです。
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