昨年11月に外部のコンサルタント会社との業務見直しの過程で事実を把握、その後も発表をせずに年末も製造販売を続けていたことのモラルが問われています。企業のモラルと同時に不祥事があった際の危機管理の上でも重大な失態といえます。それだけでなく、認証制度の信頼性を損ねる方向にも向かっているようです。
以下は、読売新聞Webからの引用です。
不二家ISO、経産省が臨時審査を要請…取り消しも
大手菓子メーカー、不二家が認証を受けている品質・環境管理の国際規格「ISO」に関し、経済産業省が認証機関の関連団体に対して臨時の審査を要請していることが、13日分かった。
不二家を巡っては、消費期限切れの原材料を使った洋菓子を製造・出荷したことが判明し、ずさんな品質管理が明らかになっている。
審査結果によっては、ISO認証の一時停止や取り消しの可能性がある。「食の安全」への関心が高まり、食品メーカーの多くがISO認証を取得する中、不二家が認証の停止や失効に追い込まれれば、経営の打撃となる公算が大きい。
経産省は、財団法人「日本適合性認定協会」を通じて、不二家の認証取得を担当した民間の認証機関に臨時審査を求めた。これを受け、認証機関が事実関係の調査に乗り出した。
臨時審査の結果、問題があると判断すれば、〈1〉是正措置の要求〈2〉認証登録の一時停止〈3〉認証取り消し――のいずれかを決める。
不二家は2001年から04年にかけ、国内5工場で環境管理規格「ISO14001」の認証を受けた。06年6月には、本社の品質保証部と資材部が品質管理規格「ISO9001」を取得している。
協会は、消費期限切れの原材料を使った洋菓子を出荷していた時期が06年10~11月で、品質規格の取得直後である点を重視している。さらに、問題が判明して以降、埼玉工場で牛乳の在庫記録を残していなかったほか、札幌工場では原材料の仕入れ時期などを製造記録台帳に記載していないなど、品質管理のずさんさが相次ぎ明らかになっている。
また、不二家は11日の会見で、「埼玉工場はISO認証を受けており、廃棄物が一定量を超えると、是正報告書を書かなくてはいけないため、(消費期限切れの牛乳を)捨てづらかった面もあったようだ」 と釈明した。この点についても、協会は「ISOは、品質管理や環境への配慮を目的としているのに、体裁を整えることを優先しては本末転倒」と事態を重く見ている。
過去には、三菱ふそうトラック・バスが大型車の欠陥・不具合を隠していた問題で、認証登録を失効したほか、神戸製鋼所やJFEスチールが工場の排出物のデータを改ざんし、6か月の登録停止となった事例がある。
��2007年1月13日14時41分 読売新聞)
不二家はISO14001、ISO9001の認証を受けていたのですね。その企業が、環境/品質管理上の重大な失態を犯したのですから、認証取消しになっても反論の余地はないです。
”埼玉工場はISO認証を受けており、廃棄物が一定量を超えると、是正報告書を書かなくてはいけないため、(消費期限切れの牛乳を)捨てづらかった面もあったようだ」”
だということですが、これなどISOのマネジメントシステムを理解していないとしか考えられません。廃棄量が一定を超えることではなく、是正処置がとられないことが問題です。是正報告が行われ、改善処置が実施されれば、認証基準が定めるマネジメントシステムが有効に機能していることの証しです。継続審査でも不適合とされることはないでしょう。今回のケースは認証制度への信頼をも揺るがしかねない問題を含んでいます。
(1) 認証取得企業の信用
(2) 審査が適切であったか
(3) 認証基準に問題がなかったか
(4) マネジメントシステムが有効であったのか
(5) 社内の取組みに問題がなかったのか
等など、認証制度の信頼性に係る様々な問題が指摘できるように思われます。当該企業、認証機関、審査機関をも巻き込んだ制度そのものへの議論に発展するかもしれません。経産省の要請により、認証機関/審査機関の調査が行われるようですが、その結果報告の公開を期待したいです。
消費期限切れの牛乳を使ったのは、定年後に再雇用されたパート従業員のようでうですが、そうしないと正社員から叱責されたと報道されています。認証取得に伴い制定された規約や手続き、プロセスの遵守義務は関連する全ての従業員にあります。実態と真相の解明、公開が待たれます。
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